かえる社 - 富士山の麓の小さな編集社

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2020.1.21

「珈琲と溶岩」

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富士吉田にある小さなお店、珈琲倶ら部。海外から仕入れた豆をお店で焙煎、販売しています。お店の周りには、珈琲を焙煎する芳ばしい香りが漂います。

 

 

このお店を経営しているのは、羽田さんご夫妻。ご夫婦ともにとても優しくて、穏やかで、笑顔がとてもチャーミング。旦那さんは元々は建築関係のお仕事をされていたそうですが、根っからの珈琲好きが高じてその後転職。現在の珈琲倶ら部を開業するに至ったそうです。そして、開業当初から旦那さんを傍で支え、二人三脚で歩んできた奥様の明るさがお店の雰囲気にも表れているように感じました。

 

そんな珈琲倶ら部さんの美味しい珈琲の秘密をご紹介していきたいと思います。

 

 

 

1989年創業 30年の付き合い そんなお二人の出会いは…


 

まずは、素敵なお二人の出会いの話から・・・。

当時、建築関係の会社に勤めていた旦那さんは独立を考えていました。しかし、建築業で独立するのはなかなか難しいだろうと考え、自分自身が好きで、まだその当時は珍しかった珈琲豆の焙煎/販売であれば可能性があるかもしれないと思いたち、開業に向けて珈琲豆を扱う会社に転職したのです。

出会いは偶然でした。転職して珈琲豆を様々な店舗に卸す仕事をしていた際、配達先の一つだったレストランで働いていたのが奥様だったのです。まさに、珈琲が繋いだご縁。それから約30年、今でもご夫婦は珈琲と共に歩んでいるわけです。

30年以上も一緒に珈琲に向き合っている羽田さんご夫妻。どんな商品を扱っているのか、ご紹介していきます。

 

 

 

珈琲豆は焙煎後、15日目が一番香る 


 

珈琲倶ら部では、世界各国から30種類以上の豆を仕入れオリジナルの焙煎/ブレンドを施し販売しています。販売している商品も様々で、「ぶれんどドリップバック」「ストレートコーヒーどりっぷバック」「オリジナルぶれんど」「ストレート珈琲」各種などです。中でもおススメは「オリジナルぶれんど」の『ふじやま』『樹海』『富士五湖』。『ふじやま』で使われている豆は4種類あり、羽田さんが独自に研究し、酸味が少なく豊かなコク、甘味、苦味が特徴的なブレンドです。

 

ふるさと納税の返礼品としては、おススメの『ふじやま』『樹海』『富士五湖』の3種類のブレンドを「富士山麓ぶれんど」として豆の状態で出しています。また、水出しコーヒーや「富士山麓ぶれんど」をドリップパックとしてセットにし、気軽に珈琲を楽しめる「富士山麓ぶれんどバラエティコーヒー3種セット」なども出しています。

 

いずれもこだわりの豆を自家焙煎した珈琲倶ら部のオリジナルです。なんと、焙煎した豆は焙煎後15日目に香りが一番高くなり、おいしく味わえるそうです。是非、カウントダウンしながら楽しんでみてください!

 

ここで羽田さんのこだわりをもう一つご紹介します。

 

パッケージに貼ってある白いステッカー。これは、羽田さんが商品のイメージによって少しずつ工夫して、オリジナルにデザインしたものだそうです。以前は、業者に頼んで作ってもらっていたそうですが、日々の細かなデザイン変更などは珈琲豆の風味に似て微妙に変化するもので、いつからか羽田さんご自身で作るようになりました。今回私たちが取材に伺った際に見せていただいたものは、カルタ風のデザインになっていました。羽田さんの遊び心や商品への思いが映っているようでした。

 

そして、驚くべきことに。高校生の私たちは知らなかったのですが、羽田さんは今現在もiMacというMacの初期のパソコンでステッカーのデザインをされているそうです。羽田さん曰く、ずっとこのパソコンで作ってきているのでなかなか変えることができないそう。容量も少ないし、動作も遅いけど、このパソコンでないと出せない味があるのではないかなと、羽田さんも仰っていました。

 

 

 

富士の溶岩を入れて焙煎


 

ここからは、珈琲倶ら部さん一番の特色をご紹介したいと思います。

 

せっかくふるさと納税として出すならば、何か他では出来ないような方法で商品を作れないかと考えた羽田さん。最初は地元の富士山の名水をセットで販売するなども考えたそうです。しかし、それは既に他のお店でもやってることを知り、断念。こだわりの強い羽田さんは試行錯誤した結果、なんと!富士山の溶岩を焙煎時に入れてみることにしました。結果、普通に焙煎するよりも遠赤外線効果によって、豆をムラなく焙煎することができるようになったと言います。

 

皆さんは、あまり富士山の溶岩に馴染みが無いかもしれません。簡単にその歴史についてお話してみます。

 

歴史上、約18回噴火をしたとされる富士山ですが、中でも被害が大きかったとされているのが3つの噴火。延暦の大噴火(800~802年)、貞観の大噴火(864~866年)、そして宝永の大噴火(1707年)。最も大きな噴火は、1707年の”宝永の大噴火”でした。その噴火は2週間以上にわたって続き、噴煙は上空20km前後にまで達したそうです。舞い上がった火山灰は、100km離れた江戸でも「まるで雪のように次々と降ってきた」と伝わるほど、大規模な被害をもたらしたそうです。

《富士山噴火絵図-神奈川県立歴史博物館HPより》

 

100km離れた地域でも被害が出たということは、もちろん火口に近い地域での被害は大きなものでした。火砕物が落下して火災が発生したり、火山灰の重みで家屋が倒壊したり、50余りの集落が焼け石と火山灰に埋もれてしまったと言います。火口から東北東へ10㎞ほどしか離れていない須走村では、降り注いだ火砕物が約3mも積もったと伝えられています。—引用(日本一の火山 富士山 荒牧重雄/太田美代)

噴火の際、噴出したマグマが火口付近の地域にも流入しています。それが固まり、岩石のようになったのが富士山の溶岩です。なんと、今現在でも富士吉田市内のあらゆるところでその当時の溶岩が石ころと同じように落ちています。

 

歴史的にも大変な災害だった”宝永の大噴火”ですが、今こうしてその歴史を背景に溶岩をうまく活かしながら美味しい珈琲を出している羽田さん。

そんな羽田さんご夫妻のこだわりの詰まった珈琲を是非、たくさんの方々に楽しんでいただきたいと思います!